蚊取り線香で具合が悪くなった、という経験ありませんか?
犬も、同じことが起きているかも知れない、今回は蚊取り線香のお話です。
以前、蚊取り線香についてのブログ記事を2本書きました。「天然だから哺乳類には無害」「除虫菊の成分は分解されやすい」という内容です。今回改めて調べてみたら、それだけでは説明できないことがありました。
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蚊取り線香、天然と合成なにが違う?
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1 なぜ、犬に蚊対策が必要なのか
我が家では蚊取り線香は必需品です。
茶々丸は、獣医師の指導のもと、一般的なフィラリア予防薬を使っていません。極端な薬アレルギー体質だからです。
フィラリアは、蚊に刺されることで媒介される寄生虫です。多くの犬は、予防薬を毎月飲むことで感染を防いでいます。でも、その薬自体が使えない茶々丸にとっては、予防薬という後ろ盾がありません。
そのため我が家では、蚊との接触をできるだけ減らす環境対策を特に重視しています。茶々丸にはヒバ水、蚊取り線香。私はシトロネラを使っています。
ただし、どの虫よけ対策も、蚊に刺されることを完全に防げるものではありません。これは茶々丸について獣医師と相談した個別の対応であり、他の犬に予防薬を使わないことを勧めるものではありません。
蚊取り線香は、長年、スーパー、雑貨店、ペットショップ、ネットで比較し、選んで来ました。ご参考になれば嬉しいです。
2 天然除虫菊の蚊取り線香
蚊取り線香の殺虫成分は、天然由来の「ピレトリン」と、それを元に合成された「ピレスロイド」です。
蚊などの昆虫には強く作用する一方、人や犬などの哺乳類では比較的分解されやすく、製品の使用方法を守れば、一般に毒性は低いとされています。ただし、「天然」「哺乳類には毒性が低い」ということは、まったく影響がないという意味ではありません。
除虫菊って、そもそも何なのか
ピレトリンの元になっている除虫菊は、キク科の多年草です。デイジーに似た、白い花を咲かせます。原産地は地中海沿岸、旧ユーゴスラビアのダルマチア地方といわれています。
発見のきっかけは、ちょっとした偶然でした。自生していた菊の花が咲き終わる頃、その花の部分に、虫が死んで付着しているのが見つかっりました。「この花には、何か秘密があるはずだ」そう考えた人々が分析を重ねた結果、殺虫効果のある成分、ピレトリンが発見されました。
日本に除虫菊が伝わったのは、明治時代です。
和歌山県出身の上山英一郎という人物が、アメリカから譲り受けた除虫菊の種を、和歌山県有田地方で栽培したのが始まりでした。
1890年、上山はこの除虫菊の粉を線香状に固めて、世界初の棒状蚊取り線香を発明します。
最初は長さ20センチほどの棒状で、燃焼時間は40分ほど。もっと長く効かせたいという要望から、あの渦巻き型が生まれました。
戦前の日本は、除虫菊の一大生産地でした。
除虫菊の栽培によって、農家を救い、輸出で国を豊かにする、そんな志から始まった産業でもあったのです。
ところが1941年、太平洋戦争が始まると、国内の除虫菊は食用作物に転換され、輸出も禁止されてしまいます。戦後、除虫菊の栽培は北海道を中心に再開されたものの、天候に左右されやすく収穫が安定しないことから、次第に他の作物へと転作が進み、国内生産は激減していきました。
代わって主流になったのが、合成ピレスロイドです。
天然のピレトリンは、光や酸素、アルカリに触れると分解されやすく、効果の持続時間が短いという弱点がありました。この弱点を克服するために開発されたのが合成ピレスロイドで、1950年代後半には、国内の蚊取り線香のほとんどが合成成分に切り替わっています。
今、市場に出回っている蚊取り線香の多くが合成ピレスロイド製である一方、天然除虫菊100%の商品は、今ではむしろ希少な存在になっています。
茶々丸は、天然成分100%、昔ながらの除虫菊の蚊取り線香、これだと、煙は強いのに、逆くしゃみは一切起きません。
ところが、電子蚊取り器。ですと、茶々丸は逆くしゃみを起こします。
3 茶々丸が電子蚊取り器に反応した経験
同じ「蚊取り」なのに、茶々丸は天然除虫菊の蚊取り線香では逆くしゃみを起こさず、電子蚊取り器を使ったときには逆くしゃみを起こしました。
電子蚊取り器には、メトフルトリンやトランスフルトリンなど、空気中へ少しずつ揮散して効果を持続させる合成ピレスロイドが使われることがあります。
ただし、茶々丸が何に反応したのかは、私には分かりません。
有効成分そのものなのか、製品に含まれる溶剤や香料なのか、使用した部屋の広さや換気、茶々丸との距離が影響したのかもしれません。
茶々丸は薬や刺激物に反応しやすいため、電子蚊取り器を使って逆くしゃみが出たときは、すぐに使用をやめ、換気をしています。
これは「電子蚊取り器は犬に危険」という意味ではなく、茶々丸には合わなかった、という一つの経験です。製品を使ったときに、くしゃみ、咳、涙、呼吸の変化などが見られたら、その犬には刺激になっている可能性も考えて、いったん使用を中止することが大切だと思っています。
4 お香タイプの蚊取り線香でヒトが不調に
お香タイプの蚊取り線香、それでヒトが具合悪くなった、ということをSNSで見かけました。
殺虫成分そのものの毒性は低い。それは事実です。
でも、人間が普通の蚊取り線香で具合を悪くした原因は、実は成分の毒性ではなく、煙の量そのものだった可能性も考えられます。。
中国とマレーシア産の蚊取り線香を実際に燃焼させて測定した研究によるデータでは、調査対象となった蚊取り線香を1巻燃やしたときに発生するPM2.5の総量が、たばこ約75本から137本を燃やした場合に相当したと報告されています。
【出典】Liu W, et al. "Mosquito coil emissions and health implications." Environmental Health Perspectives, 2003.(中国・マレーシア産の蚊取り線香を使用した実験)
https://www.researchgate.net/publication/10588487_Mosquito_coil_emissions_and_health_implications
また、インドで行われたある調査では、窓を閉め切った状態から、窓を開けるだけでPM2.5約半分には約半分に減り、窓とドアの両方を開けると、95%以上減少したそうです。
【出典】Salvi D, et al. "Indoor Particulate Matter Under 2.5 μm in Mean Aerodynamic Diameter and Carbon Monoxide Levels During the Burning of Mosquito Coils and Their Association With Respiratory Health." Chest, 2016.(インドでの調査)
doi:10.1378/chest.14-2554
これは、「蚊取り線香を使うと、たばこを137本吸ったのと同じ健康被害が起きる」という意味ではありません。製品の種類や部屋の広さ、燃焼時間、換気によって、実際に吸い込む量は大きく変わります。あくまでも海外での研究ですから、日本製品では違うと思います。
ただ、蚊取り線香は天然成分であっても、燃やせば細かな粒子や刺激性のある物質が発生することは分かります。
そのため我が家では、天然の蚊取り線香も室内では焚かず、玄関の外で使用しています。
5「天然」という言葉だけでは分からないこと
「天然だから安心」という前提で話を進めてきました。でも、実はこの前提自体に、見落とされがちな落とし穴があります。
茶々丸が使っている2つの商品には「天然除虫菊100%」を謳っています。成分表は、たとえばこうなっています。除虫菊粉末、除虫菊粕粉、木粉、タブ粉末、ヤシガラ粉末。防腐剤や着色料は、一切使用していません。つまり「殺虫成分が天然由来であること」と「製品全体が無添加であること」、です。
一方で、「天然由来」「除虫菊」という言葉を使っていても、100%とは謳っていない商品もあります。そこには、こんなものが加わっていることがあります。
- 防腐剤(練り粉のカビを防ぐため)
- 着色料(昔ながらの緑色を再現するため)
- 合成香料(香りを均一化・強化するため)
防腐剤に使われるソルビン酸自体は、食品添加物としても認められていて、哺乳類への毒性は低いとされています。誤って大量に舐めない限り、過度に心配する必要はありません。
注意したいのは、合成香料の方です。毒性の強さというより、成分が開示されないことが問題です。日本では「香料」という表示は、何十種類ものアロマ化合物をひとまとめにできてしまいます。中身は、外からはほとんど分かりません。
人間にとって「ほのかな良い香り」でも、犬にとっては強烈な刺激になっている可能性があります。これは、さっきお話しした煙の粒子の話と、本質的には同じ構造です。毒性の強さの問題ではなく、体への負荷の問題なんです。
つまり、「天然由来の成分を使っている」ことと、「それだけで作られている」ことは、イコールではありません。見分けるポイントは、「天然」という言葉そのものではなく、「100%」や「無添加」という表示、そして成分表の中身です。
6 茶々丸の具体的な対策
うちでは今、除虫菊の天然蚊取り線香は、玄関の外側で焚いています。部屋の中で焚くには、香りがあまりに強烈だからです。
夏はエアコンをつけていて、開けているのは2階の廊下の窓だけ。それでも、玄関の外で焚いている香りは、ちゃんと家の中まで漂ってきます。
茶々丸の様子を見ながら、香りの強さや窓の開け方を、日々調整しています。
散歩のときは、携帯電子蚊取り線香、茶々丸の身体にヒバ水。飼い主は肌の露出部分にシトロネラを使っています。
家の中で電子蚊取りを使うときは、茶々丸がいない時間帯に限定するか、使うとしてもごく短時間。逆くしゃみが出たら、すぐに使用を中止します。
まとめ
今回改めて調べてみて、「天然だから安心」「合成だから危険」と、単純には分けられないことが分かりました。
天然除虫菊の蚊取り線香でも、燃やせば煙や細かな粒子が発生します。一方、電子蚊取り器は煙が出なくても、殺虫成分を空気中へ揮散させて使用する製品です。
どちらも、製品の説明どおりに使い、換気や設置場所に気を配りながら、愛犬の様子を見ることが大切です。
茶々丸は、天然の蚊取り線香では逆くしゃみを起こしませんが、電子蚊取り器を使ったときには逆くしゃみが出ました。何の成分に反応したのかは分かりませんが、茶々丸には合わないと判断し、使用を控えています。
使用中に、くしゃみや咳が続く、涙が増える、目が赤くなる、元気がなくなる、呼吸の様子が変わるなど、普段と違う変化が見られたら、まず使用を中止し、新鮮な空気の場所へ移して換気します。症状が続く場合や、呼吸が苦しそうな場合は、早めに動物病院へ相談してください。
これは、すべての犬に当てはまる答えではなく、刺激に敏感な茶々丸との暮らしの中で経験し、改めて調べたことをお話ししました。
「天然」「無害」という言葉だけで安心せず、製品の成分や使い方、そして愛犬の反応を見るきっかけになれば嬉しいです。
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